給料・マネー | 2022.02.10 Thu

手取りが少ない!給与から引かれてるモノって一体なに?

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神谷 貴宏

3,000人以上の転職をサポートしてきたベテランコンサルタント。大手証券会社、半導体商社、総合人材サービス会社を経て転職支援会社へ入社。「心から満足できる出会い」をモットーに、日々業務に取り組んでいる。趣味はゴルフ。

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「手取りって、なんでこんなに少なくなるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

給与明細書を見ると、所得税などの税金や健康保険料などいろいろなものが給与から引かれていますよね。

これらがどんな目的で、どのくらい引かれているのかをご存じですか?

実は、年齢によって介護保険料が引かれたり、扶養する家族が増えると税金が安くなったり、天引きされる額は年齢や家庭状況によって変動します。

今回は、給与から天引きされるものを具体的に解説し、手取り給与の計算方法をご紹介します。


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1. そもそも手取りって?

手取りとは、基本給や残業代などの総支給額(いわゆる額面給与)から、所得税や住民税、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料などを差し引いた給与のことです。

以下のようなイメージになります。

では、手取りの計算方法を理解するために、「給与として支給されるもの」と「給与から控除されるもの」を具体的に見ていきましょう。

給与として支給されるもの

給与として支給されるのは、大きくは基本給と諸手当です。

手当には以下のようにさまざまな種類があり、会社の給与規定に則って支給されます。

基本給

基本給は毎月決まって支給される本給のほかに、職能給や職務給などの名目で支給される基本的な賃金のことです。

時間外労働手当

時間外労働手当は、所定の労働日に所定時間を超えて労働したときに支給されるもので、一般に残業代といわれているものです。

ただし、残業代には月給を時間給に換算した賃金を支払えば良い場合と、労働基準法が規定する割増分を支払わなければならない場合があります。

労働基準法では1日の労働を原則、8時間(法定労働時間)としているため、8時間を超えた場合には25%以上の割増賃金が必要です。

なお、会社が決めた1日の労働時間を所定労働時間といいます。

たとえば7時間の場合、以下のように労働時間が7時間を超え、8時間までの1時間は割増のない時間あたりの賃金を支給し、8時間を超えた部分には割増賃金が必要となります。

時間外労働手当のほか、休日手当や深夜手当などをまとめて「超過労働給与」と呼び、以下のようなものがあります。

参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査で使用されている主な用語の説明、15 所定内給与額」の情報を基に作成
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/yougo-01.html

みなし残業代(固定残業代)

みなし残業代は、給料の中にあらかじめ設定した残業代(みなし残業代)を含めて支給するものです。

みなし残業の場合、求人広告や雇用契約書の給与欄には以下のように記載されています。

【記載例】

たとえば、月給に月30時間分の残業代を含むと規定されているなら、実際の残業が月20時間でも規定通りに残業代30時間分を含む月給が支給されます。

逆に、残業時間が月40時間の場合は、30時間を超えた10時間分の残業代が別に支払われます。

資格手当

業務を行う上で必要な資格を取得している場合に支給されます。

住宅手当

住宅にかかる費用の一部を会社が補助するものです。

給与から引かれるもの

次に、給与から控除されるものについて、それぞれがどのような目的で控除され、どのような人が支払いの対象になるのかを見ていきましょう。

健康保険料

健康保険は、病気やケガの治療を受ける際に給付を受けられる医療制度です。

保険料は通常、4月~6月の3カ月の給与を平均した「標準報酬月額」から算出し、その年の9月~翌年8月まで1年間適用されます。

ただし、保険料は加入する健康保険組合によってさまざまです。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は都道府県ごとに保険料率が決められています。

また、保険料は会社と折半で負担するので、実際に天引きされるのは保険料額の2分の1です。

協会けんぽの「宮城県」を例に挙げると、保険料率は9.97%なので自己負担分(4.985%)は以下のように計算します。

さらに、賞与が支給される場合は、賞与の支給額(千円未満は切り捨て)に保険料率をかけて求めた保険料額の半分を納めます。

参考:協会けんぽ「平成29年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h29/ippan9gatu/h290904miyagi.pdf

なお、健康保険と厚生年金保険の加入対象は平成28年10月から広がり、従業員501人以上の会社では週の所定労働時間が20時間以上の労働者も加入できるようになりました。

さらに、平成29年4月には従業員500人以下の会社でも、労使の合意があれば加入することができます。

参考:厚生労働省「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai/

介護保険料

介護保険は、介護が必要な状態など要介護や要支援の認定を受けると介護サービスを利用できる制度です。

40歳以上になると、介護保険に加入しなければなりません(第2号被保険者)。

介護保険料率は全国一律で、平成29年3月分(5月納付期限分)から適用されている保険料率は1.65%です。

労働者は半分(0.825%)の保険料を負担します。

参考:協会けんぽ「介護保険料率について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/1995-298

厚生年金保険料

健康保険と同様に、4月~6月の給与やボーナスの額から求めた保険料を会社と折半で納めます。

ただし、保険料率は全国一律です。

平成29年9月から18.3%に改定され、10月の納付分から適用となっています。

給与から天引きされるのは、9.15%をかけた額です。

参考:協会けんぽ「平成29年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h29/ippan9gatu/h290904miyagi.pdf

雇用保険料

雇用保険は、失業したときや育児休業を取得したときなどに給付を受けられる制度です。

雇用保険料額は、毎月の給与(税金や社会保険料を控除する前の額)に保険料率をかけて算出します。

雇用保険料率は事業の種類によって異なり、平成29年度の「一般の事業」の保険料率は0.9%です。

保険料は企業が0.6%、労働者は以下のような計算をして0.3%を負担します。

参考:厚生労働省「平成29年4月から雇用保険料率が引き下がります」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000159618.pdf

ボーナスが支給された場合、雇用保険料の計算方法は毎月の給与と同様です。

ただし、ボーナスが支給された月の給与とは別に保険料を計算し、ボーナスの支給額から控除します。

雇用保険は会社の規模に関係なく、65歳以上の労働者を含め次の条件を満たしていれば加入できます。

参考:厚生労働省「雇用保険に加入していますか」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken/pdf/roudousha01.pdf

所得税(国税)

所得税は、1月~12月までの1年間の所得に対して課税されるものです。

支払い方は、毎月の給与から概算で支払っておき(源泉徴収)、年末調整によって実際に納めるべき税額を算出して精算します。

所得税は、課税所得が上がると税率も高くなる超過累進課税率です。

税額は、課税所得を基に税率を求め、課税所得に税率をかけてから控除額を差し引きます。

参考:国税庁「所得税の税率」の情報を基に作成
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

例えば、課税所得が200万円のときの所得税額は、速算表の「195万円を超え、330万円以下」の税率が10%、控除額は97,500円なので次のようになります。

もし、住宅ローン控除などがあれば、算出した税額からさらに差し引くこと(税額控除)ができます。

住民税(都道府県税+市町村民税)

住民税には「都道府県税」と「市町村民税」の2つの税金を合算したものです。住民税は所得税と違い、「前年の所得」に対して課税され、毎年6月~翌年5月までの12回の給与から控除して納めます(特別徴収)。

そのため、社会人1年目は、住民税の控除はありません。

住民税の計算方法は所得税との控除額の違いを調整する調整控除などもあり、やや複雑です。

ただし、主に「均等割」と「所得割」によって算出するので、ここでは宮城県と仙台市を例に挙げてみましょう。

宮城県の県民税と仙台市の市民税を合わせると均等割は年額6,200円、所得割は課税所得の10%になります。

参考:以下の情報を基に作成
宮城県ホームページ https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/zeimu/kojinkenmin.html
仙台市ホームページ http://www.city.sendai.jp/hojinkaze/kurashi/tetsuzuki/zekin/kojin/hojin.html

所得割は以下のように、まず「前年の給与収入」から「給与所得」を求めます。

次に、社会保険控除や基礎控除などの所得控除をして「課税所得金額」を算出。

さらに、10%をかけてから調整控除などの税額控除を行います。

参考:仙台市「個人市民税」の情報を基に作成
http://www.city.sendai.jp/hojinkaze/kurashi/tetsuzuki/zekin/kojin/hojin.html

給与所得の金額は、以下のような速算表で計算することができます。

参考:仙台市「個人市民税」の情報を基に作成
http://www.city.sendai.jp/hojinkaze/kurashi/tetsuzuki/zekin/kojin/hojin.html

その他、会社によっては労働組合費や親睦会費などの控除、あるいは財形貯蓄をしている場合も給与から天引きされます。

2.結局いくら引かれるの?

手取り額は給料から税金や社会保険料を天引きした額です。

では、実際に、どのくらい引かれるのかを計算してみましょう。

ただし、住民税額は自治体によって差があり、健康保険料も加入している健康組合や都道府県によって保険料率が異なります。

ここでは、宮城県に住んでいるサラリーマンを例にして手取り額の計算方法を説明しますが、あくまで参考程度に考えてください。

【ケース1】20代、年収400万円

ケース1では、20代、独身(扶養なし)の場合を見ていきましょう。

健康保険料は、宮城県の保険料率(9.97%)を基に求めたものです。

また、ケース1は40歳未満のため、介護保険料の負担はありません。

参考:以下のサイトの情報を基に作成
協会けんぽ「平成29年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h29/ippan9gatu/h290904miyagi.pdf

国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(平成29年分)月額表」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2016/data/01-07.pdf

仙台市「個人市民税」
http://www.city.sendai.jp/hojinkaze/kurashi/tetsuzuki/zekin/kojin/hojin.html

年収400万円、20代で独身の場合、手取り額は8割を下回ります。

なお、通勤手当のように非課税の手当が支給されている場合も、健康保険料などの社会保険料には含める必要があります。

【ケース2】30代、年収550万円

ケース2は結婚して専業主婦の妻を扶養し、ボーナスが支給される場合の計算方法を紹介しましょう。

ここでは、年収550万円のうち、毎月の給与が40万円(年額480万円)、ボーナスは35万円が年2回(年額70万円)と設定します。

ボーナスの所得税は月給とは違い、前月の給与からその月の社会保険料を引いた金額によって税率を求め、賞与支給額から賞与にかかる社会保険料を引いた額に税率をかけます。

また、ボーナスのときに住民税の控除はなく、30代のため介護保険料の負担もありません。

参考:以下のサイトの情報を基に作成
協会けんぽ「平成29年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」、宮城県
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h29/ippan9gatu/h290904miyagi.pdf

国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(平成29年分)月額表」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2016/data/01-07.pdf

国税庁「配偶者控除」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1191.htm

仙台市「個人市民税」
http://www.city.sendai.jp/hojinkaze/kurashi/tetsuzuki/zekin/kojin/hojin.html

国税庁「賞与に対する源泉徴収」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2523.htm

国税庁:「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成29年分)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2016/data/15-16.pdf

ケース2の所得税や住民税は配偶者控除ができるので独身に比べて安くなりますが、社会保険料と合わせた控除額はおよそ120万円。

手取り額は430万円ほどになります。

【ケース3】40代、年収700万円

ケース3では、専業主婦の妻と高校生の子ども(17歳)を扶養している場合に手取りがどのくらいになるかを見ていきましょう。

ケース3がケース2と異なるのは、40歳になると介護保険料が必要になることです。

また、子どもが16~18歳の場合、所得税と住民税を計算する際に一般扶養控除の対象となる点です。

参考:以下のサイトの情報を基に作成
協会けんぽ「平成29年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」、宮城県
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h29/ippan9gatu/h290904miyagi.pdf

国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(平成29年分)月額表」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2016/data/01-07.pdf

国税庁「配偶者控除」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1191.htm

国税庁「扶養控除」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1180.htm

仙台市「個人市民税」
http://www.city.sendai.jp/hojinkaze/kurashi/tetsuzuki/zekin/kojin/hojin.html

ケース3は配偶者控除に加え、扶養控除があるケースです。

それでも年収が高いため社会保険料が高く、手取り額は500万円代前半になってしまいます。

給与手取り計算のシミュレーションツールもある!

転職や結婚などのライフイベントによって給与が高くなったり、扶養家族が増えたりすると手取りは変わります。

手取り額の目安を知りたいときには、手軽に計算できるシミュレーションツールがおすすめです。

たとえば、年齢を一定にして年収を変えたり、独身の場合と結婚後を比べたり、条件をいろいろ変えて手取り額の変化を確認しましょう。

シミュレーションをすると収入が多少、増えても税金や社会保険料などの控除額も連動して高くなるので「手取り額はあまり増えない」という印象をもつかもしれません。

「手取り額を増やしたい」という方は、転職により年収の大幅アップを目指すのも1つの方法です。

参考:HumanValue 給与手取り計算【平成29年9月改正版】 http://www.humanvalue.jp/tool/tedori/kyuyo_tedori1.php

3.転職によって給与が増えた人は40.4%

転職によってどれくらいの年収アップが見込めるのでしょうか。

厚生労働省の「平成27年転職者実態調査の概況」では、前職に比べ給与が増加した人は40.4%でした。

うち、8.9%の人は3割以上、増えたと答えています。

参考:厚生労働省「平成 27 年転職者実態調査の概況」の情報を基に作成 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-h27-gaikyo.pdf

一方で、転職しても「変わらない」という人もいれば、「年収が下がった」という人もいます。

転職によって必ずしも年収がアップするというわけではないようですが、転職者のおよそ3割は、10%以上の給与アップを実現していることは見逃せません。

4.手取りを増やすなら年収アップがポイント

毎月の給与から税金や保険料など多くのものが引かれるので、手取り額は給与の8割ほどになってしまいます。

つまり、手取り額を増やすには年収自体を大幅にアップすることが必要です。

「今の会社では給与アップが期待できない」という方は、転職も視野に入れると良いでしょう。

特に転職エージェントを利用すれば、プロの転職アドバイザーからさまざまなサポートを受けながら転職活動ができるので、満足のいく転職につながります。

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