退職 | 2024.03.31 Sun

諭旨解雇・諭旨退職の意味とは?懲戒解雇との違いや影響をわかりやすく解説

この記事を書いた人

コンサルタント

大西 理

医療系商社で基幹病院を担当し、医師や経営・管理部門、各メーカーとの関係構築に努める。東北に貢献したいと考え、地元の人材紹介業へキャリアチェンジ。日夜、転職希望者と企業の最高の出会いを追及している。趣味はボルダリングとダーツ。

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毎日さまざまなニュースが報道されているなかで、不祥事により誰かが懲戒処分となったという内容を目にしたことがあるのではないでしょうか。

そこでよく使われているのが「諭旨解雇」や「諭旨退職」というワード。

非常によく似ている言葉ですが、退職金の有無や解雇通告をする会社側の温度感など、その意味は微妙に違います。

とはいえ、日常で目にする機会も少なく、それぞれの意味を詳細に理解している人も少ないでしょう。

この記事では、「諭旨解雇」と「諭旨退職」の意味や違いについて、混同しやすい「依願退職」の説明も交えながら解説していきます。

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1.諭旨解雇とは?諭旨退職との違いも紹介!

「諭旨解雇」(読み方は「ゆしかいこ」)とは、懲戒解雇が認められるような規則違反をした労働者に対し、実際の懲戒解雇よりも処分を軽減した解雇のことを指します。

具体的には、懲戒解雇と同等の扱いはするものの、解雇される従業員の貢献度によって退職金を支払うといったケースです。

懲戒解雇は非常に重い処分であるため、労働者の功績や将来を汲んだ会社側の温情措置と言えるでしょう。

ただし、あらかじめ就業規則に記載されている点や従業員に弁明の余地があることなど「諭旨解雇」には「懲戒解雇」と同様に法的な規制や手続きが伴います。

諭旨解雇は懲戒免職ほど不利にならない

労働者は「懲戒解雇」よりも「諭旨解雇」の方が不利になりづらいです。

例えば「諭旨解雇」は、自己都合による退職時の退職金と同額を受け取れる可能性があります。一方で、懲戒解雇は退職金を受け取れないケースが多いです。

また「諭旨解雇」は履歴書に明記する必要がないため転職活動へ支障がでづらいです。

会社規定違反や不祥事によって処分されるものの、労働者本人のその後の人生には影響しないように、会社によって情状酌量が適用されます。

ただし、刑事罰によって「諭旨解雇」を受けた場合は告知義務が発生するため、履歴書へ記載が必要です。

諭旨解雇よりもさらに処分が軽いのが「諭旨退職」

「諭旨解雇」よりもさらに処分が軽い措置として「諭旨退職」があります。

「諭旨解雇」や「懲戒解雇」など、会社側からの解約を「自己都合退職」に置き換えてもらえる措置です。

こちらも「懲戒解雇」が認められるような規則違反をした労働者に対して、再就職で不利にならないようにする温情措置と言えます。

ただし、論旨退職にすると解雇予告手当を受け取れなくなるので、そこだけは注意しておきましょう。

2.諭旨解雇の流れとは

「諭旨解雇」は突然通告することはできず、適正な手続きや流れのもと行われます。

具体的な「諭旨解雇」の手順は以下のとおりです。

  • 【STEP1】問題となる行動の調査
  • 【STEP2】懲戒事由の検討
  • 【STEP3】弁明機会の設置
  • 【STEP4】処分の決定
  • 【STEP5】解雇の30日前までに懲戒処分通知書を交付

順番いみていきましょう。

【STEP1】問題となる行動の調査

まずは問題となる行動の調査です。

従業員が就業規則違反や不祥事など、どのような問題を起こしているのか調査と事実確認を行います。

この際、具体的な証拠を集めることがポイントです。客観的にみて「諭旨解雇」に相当すると認められる理由がなければ処分できません。

例えば、問題行動につながるメールやLINEの文面、該当する従業員が業務を怠った事実の確認ができる証拠などが挙げられます。

また、問題の行動が見受けられた場合は、処分の前に口頭で注意することも大事です。口頭で注意したという事実も証拠として扱えます。

【STEP2】懲戒事由の検討

問題行動の調査の次は、懲戒事由の検討です。

就業規則を確認し「諭旨解雇」についての明記があるかどうか、どのようなケースで適用されるのかを確かめます。

就業規則違反となってないのにも関わらず処分を行うと「懲戒権の濫用」や「解雇権の濫用」になり、違法行為となってしまう恐れがあるため慎重な確認が必要です。

また、口頭での注意は、懲戒に至る理由の1つとしても重要です。口頭注意の回数や要した時間が懲戒する自由として効力を持つ場合があります。

【STEP3】弁明機会の設置

続いて、該当する従業員へ弁明機会の設置を行います。

「諭旨解雇」を行うためには本人からの事情聴取も欠かせません。この際、弁明余地を与え、どのような理由で問題行動に至ったのかなどを聞き出します。

もし弁明余地を与えず一方的に解雇をしてしまうと、「弁明余地を与えなかった」として会社側が不利になり得ることもあるため注意が必要です。

弁明機会では該当する従業員と担当者の一対一の場を設けて、話しやすい雰囲気を作り、面談内容を書面に残すようにしましょう。

【STEP4】処分の決定

弁明機会次に、処分の決定です。

問題行動の証拠や注意を促した記録、弁明記録なども考慮した上で処分の決定をしていきます。

この際、改めてこれまでの経緯の確認が必要です。

事実確認や就業規則に誤りがあると、不当解雇として会社が訴えられるといったトラブルにもつながりかねません。

判断が難しい場合は、弁護士や社労士のような専門家への相談も検討すると良いでしょう。

【STEP5】解雇の30日前までに懲戒処分通知書を交付

処分が決定したら、解雇の30日前までに懲戒処分通知書を該当する従業員へ交付します。

犯罪や刑事罰など、よほどの理由がない場合は、解雇の30日前までに交付することが労働基準法で定められています。

口頭での懲戒処分の通知は、後々意見の食い違いが発生する可能性もあるため、書類で通知で通知を行いましょう。

通知書を交付した上で期限までに退職届の提出を促し、退職届が出されなかった場合は同日付けで解雇となります。

なお、事前に解雇通告を行わない場合は、解雇予告手当の支払いが必要です。

3.諭旨解雇が行われた場合の影響とは

ここからは「諭旨解雇」が行われた場合の影響を、以下の3つのポイントに絞って解説していきます。

  • 影響(1)従業員の退職金
  • 影響(2)従業員の失業保険
  • 影響(3)転職

「諭旨解雇」によって労働者へどのような影響がでるのかについてもしっかり理解しておきましょう。

影響(1)従業員の退職金

「諭旨解雇」が行われた場合、従業員の退職金は支払われるのが一般的です。

労働者が退職届を提出すると自己都合退職という扱いになり、各会社の規定に従って支払いが行われます。

規定は各企業ごとに異なるため、入念な確認が必要です。

また退職金の金額は、規定や「諭旨解雇」になった事由や従業員の貢献度を考慮して決定します。

ただし、自己都合退職時と同額が支払われる場合が多く、よほどの理由がない限り減額となるケースは少ないです。

影響(2)従業員の失業保険

「諭旨解雇」が行われた場合でも、失業保険は受け取れます。

「諭旨解雇」を受けた場合に失業保険が給付されるまでの期間は次のとおりです。

待機期間:7日間(離職票の提出と求職の申し込みを行う受給資格決定日から7日間)

給付制限:最大で3ヶ月

退職後すぐに失業保険が給付されるわけではないため、注意が必要です。

一般的な自己都合退職の場合、給付制限期間は2ヶ月となり、会社都合による失業の場合は、給付制限なしで受け取れます。

影響(3)転職

「諭旨解雇」が行われた場合、転職への表面的な影響はありません。

「諭旨解雇」は履歴書に記載する必要がないためです。

「諭旨解雇」自体が、退職後の就職活動へ支障が出ないようにする温情措置であるため、一般的には影響はありません。

ただし、解雇理由証明書の提出を求められた場合、「諭旨解雇」が下された事実が企業の採用担当者へ伝わってしまうでしょう。

4.諭旨解雇と懲戒解雇との違いとは

「諭旨解雇」と類似した言葉として「懲戒解雇」があります。

「懲戒解雇」は“会社側が一方的に労働者との契約関係を破棄すること”です。

さらに解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3つがあり、このうち「懲戒解雇」は最も重い処分です。

ここからは「懲戒解雇」について、以下の3つのポイントにまとめて解説していきます。

  • 「懲戒解雇」の意味は?
  • 「懲戒解雇」の理由に当てはまる事例
  • 「懲戒解雇」となることで受けるペナルティ

「懲戒解雇」の意味を理解し「諭旨解雇」との違いを把握していきましょう。

「懲戒解雇」の意味は?

懲戒解雇とは、会社の規律と秩序を乱した労働者に対して課される制裁処分です。教員や警察官をはじめとする公務員の場合は懲戒免職と呼ばれます。

就業規則違反や不正行為、犯罪などの規律違反に対してとられる措置です。

日本国内における労働者の立場は、労働基準法によって厚く保護されているため、会社が懲戒解雇を実施するというのは、よほどの事情がある場合に限られていると言えます。

「懲戒解雇」の理由に当てはまる事例

では、「懲戒解雇」に当てはまる事例にはどのようなものがあるでしょうか。

ここでは以下の事例に分けて解説していきます。

  • 事例(1)長期の無断欠勤
  • 事例(2)大幅な経歴詐称
  • 事例(3)犯罪など法令に反する行為で逮捕や起訴をされた場合
  • 事例(4)会社の金品横領

それぞれ詳しく見ていきましょう。

事例(1)長期の無断欠勤

たった1日でも会社に損害を与える無断欠勤を、正当な理由もなく長期間も続けてしまえば懲戒解雇が認められる可能性が高いです。

労働基準監督署は無断欠勤が労働者の責に帰すべき事由になるケースとして、2週間以上の無断欠勤と定めています。

オ 原則として二週間以上正当な理由もなく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合

引用:解雇予告除外認定申請について

長期の無断欠勤と判断する目安は14日間が一般的と考えて良いでしょう。

事例(2)大幅な経歴詐称

大幅な経歴詐称も「懲戒解雇」が適用される事例として挙げられます。

労働契約の根本は、会社と労働者との信頼関係です。

会社は学歴や職歴、資格の有無などを考慮して労働力を適正に配置しますが、経歴詐称はこの判断を謝らせることにつながります。

経歴詐称によって適正でない年収を受け取ることになれば、会社へ損害を与えることにもなるでしょう。

本当の経歴ではその労働者を採用するにいたらなかったとわかれば、懲戒解雇が認められても当然です。

事例(3)犯罪など法令に反する行為で逮捕や起訴をされた場合

法令に反する行為によって逮捕起訴された場合は「懲戒解雇」となる可能性が高いです。

労働者が会社内で問題を起こさなかったとしても、私生活で何か重大な犯罪を起こして逮捕・起訴されれば、懲戒解雇の理由として認められます。

ただし、冤罪もしくは無罪だった場合は懲戒解雇が取り消され、復職が認められることもあります。

事例(4)会社の金品横領

会社金品の横領も「懲戒解雇」の事由として認められる可能性があります。

会社が労働者と契約関係を結ぶ理由は、あくまで利益をもたらしてもらうためです。

労働者による横領・着服は会社に大きな不利益をもたらす背信行為に他なりません。

仮に少額の横領であったとしても、犯罪行為であるため、事案が告訴されるか否かは問わず、「懲戒解雇」となる十分な理由となります。

「懲戒解雇」となることで受けるペナルティ

前述したとおり、「懲戒解雇」は解雇の中で最も重い処分です。

労働者が懲戒解雇となることで被るデメリットは「普通解雇」や「整理解雇」とは比較にならないほど多岐にわたり、以下のようなペナルティが考えられます。

  1. 会社の就業規則によって、退職金が支払われない可能性がある
  2. 「会社都合」ではなく「自己都合」の退職扱いとなるため、他の解雇と比べて失業保険で受けられる手当が減る
  3. 履歴書に懲戒解雇されたことを明記しなければならない

何か悪いことを起こして「懲戒解雇」となるわけですから、当然ながらその代償は大きいです。

もちろん転職活動にも悪影響を及ぼします。

5.諭旨解雇と懲戒解雇以外の5つの懲戒とは

ここからは「諭旨解雇」と「懲戒解雇」以外の懲戒を5つ紹介していきます。

  • 懲戒(1)戒告(かいこく)
  • 懲戒(2)譴責(けんせき)
  • 懲戒(3)減給(げんきゅう)
  • 懲戒(4)出勤停止(しゅっきんていし)
  • 懲戒(5)降格(こうかく)

それぞれ詳しくみていきましょう。

懲戒(1)戒告(かいこく)

戒告(かいこく)は懲戒の中で最も軽い処分であり、口頭で注意を促すものです。

日常業務の中における口頭注意が戒告に当てはまる場合もありますが、懲戒処分としての戒告には以下の2つの対応が該当します。

・労働者へ反省を促す

・他の従業員へ周知し、問題行動だと示す

上記2つの対応を取らない口頭注意は、懲戒処分としての戒告にはなりません。

懲戒(2)譴責(けんせき)

譴責(けんせき)は、該当従業員に対して始末書の提出を求めるものです。

戒告も譴責も就業規則によって定められるものであり、戒告と同等の処分とする場合や戒告の際にも始末書を提出させる場合もあります。

口頭の注意のみではなく、書類をもって従業員に反省の言葉を述べさせると言う点が特徴です。

なお、戒告も譴責も言及などの経済的な処罰は行われませんが、昇格や昇進に影響する可能性があります。

懲戒(3)減給(げんきゅう)

減給は従業員が受け取る賃金の中から、一定額を差し引く処分です。

ただし、減給は労働基準法により以下のような上限が設けられています。

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

引用:労働基準法 第91条

例えば、月給が25万円の従業員の場合、減給上限は約4200円です。

懲戒(4)出勤停止(しゅっきんていし)

出勤停止は、従業員へ一定期間の出勤と就労を禁ずる処分です。自宅謹慎とも呼ばれます。

出勤停止期間中は給料が支払われず、停止期間に上限は設けられてません。

出勤停止期間は違反行為の重さによって変動することが多く、3日や1週間などの場合があります。

ただし、賞与(ボーナス)については出勤停止期間中でも支払われます。

懲戒(5)降格(こうかく)

降格は役職や等級が引き下げられる処分です。

役職や等級の降格に伴い、基本給の減額や役職手当の取り消しなども伴う場合が多いです。

給料が減るため、該当する従業員への影響が最も大きいとされています。

ただし、懲戒としての降格と人事権行使としての降格では適用されるルールなどが異なるため注意が必要です。

6.「依願退職」とは

「諭旨解雇」や「諭旨退職」と似た言葉として「依願退職」というワードを目にした人も多いのではないでしょうか。

一見すると「諭旨退職」と似ているように思えますが、全く違った意味を持っています。

「依願退職」とは「自らの申し出で退職すること」であり、自己都合退職と同義です。

不祥事のニュースなどで使われることが多いように思えますが、懲戒処分の一部である「懲戒解雇」や「諭旨解雇」とは大きく異なります。

また、解雇や定年退職を除くほとんどの退職は「依願退職」に当てはまると考えても差し障りないでしょう。

なお、労働者が提出した退職願を会社が受理しない場合は、民法第627条で“当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる”と記されています。

この場合において、“雇用は解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する”という規定に則り、その後2週間経てば雇用契約が終了となりますが、その場合は依願退職ではなく任意退職になります。

7.まとめ

今回紹介した退職形式を、従業員側へのデメリットの多さで並べると以下の通りになります。

懲戒解雇>諭旨解雇>諭旨退職≧依願退職

懲戒処分を受けてしまうと、さまざまなペナルティを被ることになってしまいますが、会社側の対応によってはそれを減らすことも可能です。

もしものときのために「諭旨解雇」「諭旨退職」「依願退職」の違いは、しっかりと記憶に留めておきましょう。

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